SAKU的楽勝生活

Diary noteからお引越し。

愛妻家

ご夫婦でうちの施設に入居されている佐藤さま(仮名)夫妻。

それぞれ別のユニットに入居されており、私のユニットには奥さまの春子さん(仮名)がおられる。

ご主人さまの太郎さん(仮名)は90代半ばだけど認知症もなく、U字歩行器で歩かれ、1日おきにお菓子と飲み物を持って奥さまの部屋に来られてしばらく過ごされる。

一方春子さんは車椅子で、自分のことはほぼできるけれども認知症は日に日に進んで行き、太郎さんや息子さま夫婦に逢われても「どちらさまですかね」という感じで、それでも太郎さんとお部屋で2人で並んでベットに座って一緒にお菓子を食べたりしている。

太郎さんは春子さんが自分のことを覚えていなくても「認知症なので仕方ないことです。家内は認知症がひどいのでしっかりサポートしてください」と言っていた。

正直、太郎さんは頑固で息子さま夫婦や私たち職員の言うことにはなかなか聞く耳を持ってくださらず、特に息子さまには厳しい態度を取られることが多かった。

息子さま夫婦は太郎さんとは少し距離を置いた付き合いをされており、太郎さんと春子さんが違うユニットにおられるのも息子さまのご意向だった。

そんな太郎さんだけど本当に春子さんにだけはただただ優しかったし、春子さんが他の男性利用者さまと親しげにしているとやきもちを焼かれるほどの愛妻家だった。

 

1ヶ月前くらいのある日太郎さんが転倒され、それから調子を崩され、春子さんのお部屋にも来られなくなり、何日かして入院された。

春子さんは太郎さんのことは忘れて元気に暮らしておられたが、私が夜勤の夜22時ごろ突然車椅子でユニット外に出ようとされた。

こんなことは今までなかったので理由を聞くと

 

「主人を探しに行く!」

 

太郎さんがどこにおられるかはわかっているけど、今寝ておられるから朝になったら逢いに行きましょうと説得してまた横になっていただいたが、「もしや・・・」という予感があった。

そしてその予感は的中してしまい、太郎さんが亡くなったお知らせが届いたのだった。

 

愛妻家だったから最期に逢いに来られたんだろうなーとせつなくも温かい気持ちになった。

これからしっかり春子さんのサポートしないと太郎さんに怒られるなー。

私たちにはけっこう厳しかったからなー(笑)